Overview
概 要
概 要
東京大学大学院 工学系研究科
先端電力エネルギー・環境技術教育研究アライアンス
代表 熊田 亜紀子
近年の地球環境への意識の高まりや,エネルギー価格の高騰,資源ナショナリズムの台頭による一次エネルギー供給への危機感の高まり,規制緩和による多様なエネルギー事業の創出,工学離れによる将来の人材確保の困難化など,電力エネルギー技術を取り巻く環境は世界的にも大きく変化しています。
このような社会情勢を踏まえて,東京大学大学院 工学系研究科電気系工学専攻では,電気事業連合会を中心とした電力エネルギーに関連する産業界の支援を得て,魅力ある先端電力エネルギー・環境技術を教育・研究する産学連携のしくみとして, 2008年6月に寄附講座を中核とする教育研究センターを工学系研究科に発足させ,産学一体となって世界のトップランナー技術を研究開発するとともに,将来の電力エネルギー・環境技術を支える優秀な人材育成を推進することといたしました。そして2020年4月に「センター」を電気系工学専攻所属の「アライアンス」に名称変更し、新たなスタートを切りました。
この間においても電力システム改革の完成、政府の2050年カーボンニュートラル宣言、エネルギー地政学の変化と、社会情勢の変化はますます大きくなっています。私たち先端電力エネルギー・環境技術教育研究アライアンス(APET)は,日本社会および国際社会の持続的発展に貢献すべく,
〇 産業界とのソフトからハードまでの幅広い分野の共同研究
〇 学部生・大学院生に向けた関連講義や論文指導,企業見学や国内外インターンシップなどの産業界との交流機会の提供,国内調査費や海外渡航費の援助
〇 国内外の大学との共同研究や人的交流
〇 長期電力システムビジョンの策定
など幅広い活動に取り組んでいます。
社会を支える基盤である電力エネルギー・環境技術に関心がある,学んでみたいなという学生のみなさんが,一人でも多く私たちの研究活動に参加されることを期待しています。
また,産業界のみなさまには,共同研究,企業見学,インターンシップなどの学生と産業界の接点に,温かいご協力をお願い申し上げますとともに,さらに多くのみなさまが私たちAPETにご理解とご賛同を賜りますよう期待しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
エネルギー資源ナショナリズムの台頭,化石資源価格の高騰,地球温暖化,電力自由化,地震による大型発電所の停止による停電リスクの顕在化など,エネルギーを取り巻くさまざまな状況の変化のもとで,電源から需要家まで含めた電気エネルギーの供給ネットワークシステムの効率的形成が喫緊の課題となってい ます。
この課題に挑むには,材料に始まり,デバイス,機器,システム,運用制御に至るまでの広範な技術分野の統合が必要であり, 同時に,環境問題や国際標準化などのグローバルな視点と,資源問題やエネルギー戦略など長期展望の視点を合わせもつ,総合判断力を備えた人材が求められます。
東京大学 先端電力エネルギー・環境技術教育研究アライアンス(APET)は,この要請に応えるため,システム面とハード面との両方に視点を置き,①新たな電気エネルギーネットワークシステムの概念構築と,基盤となる革新的なシステム技術,省エネルギー技術,環境負荷低減技術,アセットマネージメント技 術,インテリジェントな監視制御技術に関する教育・研究, ②極限的なハードウェア技術や構成材料を提案・統合して課題解決にあたる実践的かつ基礎的な教育・研究を,強力に推進します。
APETは,このような教育・研究の推進を通じて,技術統合力と総合判断力とを備え,個別技術分野の深い専門性にも裏打ちされた,優秀な人材を育成することをめざします。
電力エネルギー・環境分野における,さまざまな課題を解決するためのキーテクノロジーとしては,例えば次のような技術が考えられます。
再生可能エネルギーによる分散型電源のネットワーク活用拡大技術
電源と負荷の協調による省エネルギーCO2削減技術
電力貯蔵,超電導などの材料技術とその応用による高信頼度ネットワーク構成技術
ナノ物理・ナノ化学の原理に基づく電気材料,電池材料の創成とその応用
ネットワークの高度化を実現する高効率電力変換のためのパワーエレクトロニクス技術
情報・通信ネットワークと融合した情報エネルギーネットワーク技術
電気自動車の電力供給ネットワークでの有効利用技術
システム寿命診断を可能とするスマートセンシング技術,既存システムの更新を合理的に最適化するアセットマネージメント技術
系統連系されるインバータ機器やインテリジェント家電の増加による電力品質対策技術,EMC対策技術
エネルギー問題,環境問題,技術の国際標準化などにおける世界への貢献
電力ケーブル無しで電力を送る非接触電力伝送(ワイヤレス給電)技術
APETの中核は,電気系工学専攻に開設した,ユビキタスパワーネットワーク寄附講座とパワーフロンティア寄附講座です。
産学連携は,これら二つの寄附講座を支援している電力エネルギー分野の産業界(電力会社,鉄道会社,電力機器メーカー)との連携を始めとして進んでおります。ガス会社,建設会社,情報通信機器メーカーなどの広範な産業界との連携も,今後拡がっていくものと期待しています。
学内連携としては,電気系工学専攻の各講座との密接な連携はもちろんのこと,あわせて工学系研究科のエネルギー関連の他のセンター組織や寄附講座との連携も進めております。また,国内外の大学との定期的な情報交流や共同研究を通じた連携も推進してまいります。